イジワル専務の極上な愛し方
「え? 翔太さんのマンションへですか……?」

思いがけない言葉に、しばらく呆然とする。そんな私の手を、彼はギュッと握った。

「そう。だって、俺が家まで送るのはイヤなんだろう? それなら、俺の家へ来てくれたらいい」

「それは、誤解です。イヤってわけじゃなくて、申し訳ないからです」

迷惑に思っているわけじゃない。ただ、翔太さんが本当に優しくて、それにいつも甘えているばかりじゃいけないと感じたから。

すると翔太さんはクスッと笑って、私の両頬をそっと包み込んだ。

「本当に気を遣いすぎだって。俺は、彩奈と一緒にいる時間が、もっと欲しいと思ってるだけなのに」

「翔太さん……」

「送らなければ気にならないんだろう? それなら、明日泊まりに来ればいい。用意してきて」

「えっ!? と、泊まりですか?」

いきなり、お泊り!? さすがに驚きを隠せない私は、あ然として翔太さんを見つめる。だけど、彼はニッとして言った。

「そう。なにも、驚くことないだろう? 俺たち、付き合ってるわけだし」

「それはそうですけど……。でも、ちょっと早くないですか?」

恥ずかしさが込み上げながら尋ねると、翔太さんはきょとんとした。

「早いって? 俺は、深い意味なく泊まればいいんじゃないかって言ってるだけだけど」

「え……? そ、そうなんですか」

顔が、一気に赤くなるのが分かる。もしかして私、とんでもない勘違いをしていたんじゃないの……?

まともに翔太さんの顔を見られなくて俯き加減になると。優しく頭を叩かれた。

「じゃあ、今夜はお疲れ。明日、楽しみにしてるから」

彼はそう言うと、専務室に戻っていった。私は一人で、なにを混乱しているんだろう。

お泊りに誘われれば、もしかして……と思うほうが自然な気がするけれど。

翔太さんの考えていることが、いまいち掴めないな……。
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