イジワル専務の極上な愛し方
最後にテレビで祐一さんを見たのは、たしか去年くらい。

そのときより、派手さが増していて驚いてしまった。

華やかさといえば聞こえはいいかもしれないけれど、明るい茶色の髪は、少し長めで無造作にアレンジされている。

日焼けした肌に、筋肉質の腕。目鼻立ちの大きなルックスで、人目は引くだろうけど……。

学生の頃の爽やかな雰囲気は、かけらもなくなっている。

彼に未練はひとつもないけれど、フラれた手前、再会は気まずいな……。

それに、翔太さんになんて話そう。黙っていても、問題ないかな。まさか祐一さんのほうから、私とのことを話すとも思えないし。

彼のことは、あまり意識しないでいよう。そう決めて、業務を再開させた。

◇ ◇ ◇

「スムーズに仕事が終わってよかったな」

業務が終わり、翔太さんの車で彼のマンションへ向かう。仕事中はそれほどでもなかったけれど、いざ車に乗ると、かなり緊張してきた。

「そうですね。まだ、時間も早いですし……」

十九時半か……。そういえば、夕飯はどうするんだろう。

「彩奈、お腹空いたろ? ベタだけど、夕飯はフレンチでいい?」

「は、はい。楽しみです」

偶然だと分かっていても、自分が考えていたことを答えてもらったみたいで驚いてしまう。

と同時に、彼と一緒にいることが心地いいと、素直に思い始めていた──。
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