イジワル専務の極上な愛し方
「ありがとうございます……」

社長に紹介してくれると言ってもらえて、とても嬉しい。それだけ、翔太さんが私との関係を真剣に考えてくれているということだろうから。

でも、いざ社長と会うことを想像してみると、やっぱり緊張してしまう。専務である翔太さんと、一社員でしかない私。きっと反対されるんだろうな……。

そんな不安を感じながら目を閉じると、翔太さんの優しい声がした。

「反対されることはないから、安心していていいよ」

「えっ? どうして、私の考えていることが分かるんですか?」

思わず目を開けると、彼の穏やかな眼差しがあった。

「分かるよ。お前が思うよりずっと、俺は彩奈が好きだから」

「翔太さん……」

嬉しくて、胸に熱いものが込み上げてくる。きっと翔太さんは、いつだって私を分かろうとしてくれているんだ……。

私の気持ちに寄り添ってくれる……。それを感じて、彼への想いが今までと変わっていくのを自覚した。

「親父が恋愛にうるさいのは、兄貴にだけ。なにせ、未来の社長だから。俺は、兄弟の真ん中だけあって、けっこう自由なんだよ」

「そうなんですか?」

それでも、やっぱり誰でもいいってわけじゃないと思う……。自信を持てきれない私に、翔太さんはクスクス笑う。そして、私の唇にそっとキスを落とした。

「彩奈がどれくらい素敵な女性か、今日だけでも改めて分かった。もっと、自分に自信を持ったほうがいい」

「私が素敵……ですか?」

「ああ。打算もなくて、欲もなくて。一緒にて、癒されるんだ。俺が普段いる環境が、どれほど裏表ある世界か、思い知らされる気がする」

自虐気味に微笑む彼に、私はどこか切なくなった。翔太さんには、私では考えつきもしない大変さがあるんだろうな。

特に人間関係なんて、損得が絡んでいたり、彼の肩書き目当てで近づいてくる人もいるんだろうし。

そんななかで、私といて癒しを感じてもらえるなんて、素直に嬉しい。もっともっと、翔太さんに安らぎをあげられたらなって、心からそう思う……。

「私、翔太さんと過ごせば過ごすほど、どんどん恋しそうです。今まで、こんなに私を分かってくれる人も、分かろうとしてくれる人にも、出会ったことがなかったので……」
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