イジワル専務の極上な愛し方
そう答えれば、祐一さんは私の連絡先をこれ以上聞こうとはしないだろう。そう思ったから。

でも彼は、涼しげな表情をして、私に顔を近づけてきた。

その行動に、思わず後ずさりをしてしまう。学生の頃は、あんなに好きな人だったのに、今はこんなにも抵抗感を覚えるなんて……。

「へえ。だけど、連絡先くらい構わないだろ? なあ彩奈、今回の取引を成功させたいとは思わないか?」

「え……? 祐一さん、なにを言ってるんですか?」

息を呑むほどに驚いて、彼を見据える。こんなに強引で、無神経な人だった……?

「真中専務は、とても頭がキレる方だよな。ビジネスセンスも抜群だし。今回は、俺のブランドのプロモーションを、協力してもらう予定なんだよ」

「うちのメディア力を活用して……ということですよね?」

「そう。お互い、会社としていい宣伝になる。真中専務だって、きっと成功させたいだろう。でも、彩奈の態度次第では、白紙にしたっていいんだ」

鼻で笑わんばかりの祐一さんに、私は動揺を隠せない。なにがどうして、そういう条件になるの?

「私の態度次第って……。私自身と、今回の業務提携は、直接関係ないじゃないですか」

思わず声を大きくする私の口を、祐一さんは手で優しく覆った。

「専務に聞こえるぞ?」
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