イジワル専務の極上な愛し方
「変なことを言わないでください」

ギクッとしながらも、平静を保ち会社まで向かう。

そろそろビルの玄関に差し掛かるから、翔太さんの話題は終えてしまいたい。

すると、祐一さんは突然私の腕を掴み、その歩みを止めさせた。

「ちょっと祐一さん、やめてください」

キッと睨みつけても、祐一さんは不敵な笑みを浮かべ続けている。

「騒ぐなよ。周りに怪しく映るぞ? それより、図星なんだろう?」

「あなたには、関係ありませんから」

どうして、それに気づいたんだろう。そして、知ってどうするつもり?

内心ビクビクしながら、彼の手をふりほどこうとする。すると、背後から「浅沼社長」と呼ぶ声がして、背筋に冷や汗が流れた。

祐一さんと同時に振り向くと、そこには翔太さんが立っている。

口角を上げて微笑みを浮かべているけれど、視線は鋭い。ほんの一瞬だけ、私の腕に目を向けた。

それが分かり、急いで祐一さんの手をふりほどく。

「これは、真中専務。本日も、急な予定変更を申し訳ありません」

祐一さんは背筋を伸ばすと、翔太さんに頭を下げた。
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