イジワル専務の極上な愛し方
そういうところは、しっかりしたビジネスマンといった雰囲気だけれど、再会してからの彼の一連の言動から、私には誠実さは感じられない。

それに、翔太さんもどう思ったか……。

「いいえ。時間は調整できたから構わないのですが、なぜ社長も同伴を希望されたんですか?」

静かに言う翔太さんの言葉に、私は思わず声を上げそうになり抑えた。

社長ということは、つまり……翔太さんのお父さんだ。そんなことまで、要求していたの?

「直接、僕の業務ビジョンを聞いていただきたかったもので。僕としても、御社との取引を、ぜひとも成立させたいと思っているんです」

「そうですか。浅沼社長の心意気は、十分伝わってきました。ですが、うちの秘書への過剰な干渉は、避けていただきたいですね」

翔太さんの厳しい口調に、怒りが垣間見えるよう……。それは、私が祐一さんと一緒だったからというのもあるだろうけれど、祐一さんの強引なやり方が気に入らないんだろう。

それは、三か月秘書をやっていたから分かる。私がどうこう以前に、取引が成立するのか怪しい感じだ。

祐一さんって、こんなに強引な人ではなかったはずなのに。それとも、学生の頃は、彼の本性に気づかなかっただけなのかな。

「これは、すみません。彼女は元恋人ということもあり、とても懐かしかったもので。今回の再会は、僕としてはとても嬉しかったんです」

笑みを浮かべて言う祐一さんに、硬い表情の翔太さんはなにも返さない。代わりに、「社長の時間もあるので」と言い、会社までの道を急いだ。

だけど、どうして祐一さんは私と翔太さんの仲を勘づいたんだろう。それとも、だたカマをかけているだけ……?
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