イジワル専務の極上な愛し方
なんで、向こうから着信音が……？ 不思議に思い、廊下を引き返していると音は止み、代わりにドアが開く音がしたかと思うと、翔太さんが小走りで出てきた。

「おはよう、彩奈。どうかした？」

ベッドルームとは反対側の奥の部屋から出てきたみたい。たしか、そこには書斎があるはずだ。

翔太さんは、Tシャツとハーフパンツに着替えている。彼のルームウエアだ。

「おはようございます……。起きたら、翔太さんの姿が見えなかったので……」

書斎で、仕事をしていたのかもしれない。昨夜、社長に祐一さんとの取引の成功を課されたわけだし……。

きっと翔太さんなら、朝から仕事を始める。そんなこと、ちょっと考えればすぐ分かることだったのに……。

「彩奈？」

気がついたら、翔太さんの側に行き、彼の体を抱きしめていた。

「ちょっと怖かったんです。翔太さんが、どこかに行っちゃった気がして……」

目が覚めて、側にいるはずの人がいないって、こんなに心細いことなんだ。

知らなかった……。

すると、翔太さんも私を優しく抱きしめてくれた。

「俺は、黙っていなくなったりしないよ。不安に思う必要なんてない」
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