イジワル専務の極上な愛し方
私たちの愛は強いんです
「いや……、どうもしないよ」

翔太さんは、パソコンの画面を険しい表情で見ている。祐一さんのメールを見ているのかもしれないから、邪魔をしないでおこう。

お茶を置くと、静かに専務室を出ていく。仕事のことなのに、私にはほんの少しでも話してくれないのかな……。

とても疲れているみたいだから、難しい業務に携わっているのかもしれない。だけど、私が把握している限り、祐一さんの件以外では心当たりがない。

もしかして、朝メールを打っていたのは、祐一さん宛てだったとか? それにカフェで会っていた人も、彼の可能性がある。だから、話してくれないの?

でも、どうして? 私に心配させないため? 気遣ってくれるのは嬉しいけれど、相談も報告もしてくれないのは寂しい。

私だって、翔太さんの支えになりたいのに……。


二十二時に、マンションへ帰った私たち。途中のレストランで食事を済ませたから、あとはお風呂に入るだけ。

お湯を沸かし終えた私は、書斎に籠っている翔太さんをドア越しに呼んだ。

「翔太さん、お風呂が入りましたよ」

食事中も車中も、翔太さんはどこか上の空で、私がなにげない話を振っても、相槌くらいしかしてくれなかった。

「彩奈が先に入っていいよ。俺は、もう少しあとにする」

そう声が聞こえ、私は小さく返事をした。なにを、しているんだろう。そんなにも忙しいこと? どうして、なにも教えてくれないの?

社長から課された仕事のことは、一緒に頑張りたいと思っているのに、翔太さんは違ったのかな。

あまり、頼りにされていないのかも。そんなネガティブなことを考えてしまい、切なく感じながらお風呂へ向かった。
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