イジワル専務の極上な愛し方
「えっ? なんでって……。私は秘書ですから、距離を置くのは自然かなと……」

戸惑い気味に言うと、専務は小さく微笑んだ。

「そういうところ、やっぱり田辺さんだよな。ところでさ、なんで急にこういう雑誌見ようと思ったんだ?」

「それは……。専務のことを、もう少し知ろうかなと思いまして……」

由奈たちまで専務を知っているのだから、私はもっと知らないといけないかなと考えたからなんだけど……。

口にすると、なんだか恥ずかしいな。

「へえ……。それで、なにか分かった?」

「はい、専務がきちんとした信念でお仕事をされているんだなと」

そう答えると、専務はクックと笑った。なにか変なことを言ったかなと、恥ずかしくなってくる。

雑誌に載っていたのは彼へのインタビュー記事で、会社の今後の方向性や、業界全体について質問をされていた。

専務は、思っている以上に、私たち社員を大事にしているんだなと感じたし、それにとても前向きな印象もあった。

たしかに、いつも仕事熱心だし、常に現場を気にかけている。

女性関係を引いて見てみれば、素敵な方なのかもしれない……。

「当たり前だろ? これでも、会社経営に携わってるんだ。だけどまあ、ありがとう、気がついてくれて」

笑いをこらえるように言った専務は、そのまま専務室へ入っていった。
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