イジワル専務の極上な愛し方
ほんの少しの間、翔太さんの胸に顔を埋めていた。
「それでは、お疲れさまでした」
オフィスビルを出て、翔太さんに挨拶をする。今夜は、彼は接待があり、ここでお別れだ。
私は駅前で、食事をして帰るとすでに彼には伝えてある。
「ああ、お疲れ」
会社では、誰に目撃されるかも分からないから、人目につくところでは、あくまでも上司と部下の関係で接し続けることにした。
翔太さんとは、社長から課された仕事が成功してから、私たちの関係を公表しようということで、意見が一致したからだ。
彼はお迎えの車、私は駅までの道を徒歩で進んでいく。すると、数分歩いたところで祐一さんと出くわしてしまった。
彼はなぜか、歩道の隅で立っている。誰かを待っているのか……。
「よお、彩奈。やっと会えた。お前さ、いつもどうやって帰ってるの? 専務の車?」
ニッと笑った彼は、大股で私の側へやってきた。”やっと会えた”って、まさか私を待ち伏せをしていたの?
驚きよりも恐怖が込み上げて、強張った表情で身を翻そうとする。だけどそれを阻まれるように、祐一さんに腕を掴まれてしまった。
「おっと、逃げなくてもいいだろう? お前の会社、随分と強気だな。俺からの取引中止の申し出も、すんなり受けたんだもんな」
なにが言いたいんだろう……。挑発的な言葉に、思わず言い返しそうになる。
だけど、うっかりでも久遠寺グループのことを話すわけにはいかない。
口を滑らす前に、早く祐一さんから離れてしまおう。
「私は、あくまで専務秘書です。会社の意志決定に関しては、詳しく知ることはありませんから」
「そうかな? 専務の恋人なんだから、いろいろ教えてもらえるだろう? この先、専務はなにを考えてる? 教えてくれないか?」
あくまで冷静にそう言う祐一さんに、やっぱり彼が私に愛情なんてないと確信する。
私に近づいてきているのは、未練があるからじゃない。
アイシー&ビーの内部事情を聞きたいからなんだ。
「教えるわけないじゃないですか。だいたい、そんなに気になるなら、どうして取引をやめるなんて言ったんですか?」
彼の手を振りほどき、キツイ視線を向ける。すると、祐一さんは無表情で淡々と言った。
「だから、それは俺の条件を呑まなかったから。彩奈が、俺とよりを戻さなかったからだよ」
「それでは、お疲れさまでした」
オフィスビルを出て、翔太さんに挨拶をする。今夜は、彼は接待があり、ここでお別れだ。
私は駅前で、食事をして帰るとすでに彼には伝えてある。
「ああ、お疲れ」
会社では、誰に目撃されるかも分からないから、人目につくところでは、あくまでも上司と部下の関係で接し続けることにした。
翔太さんとは、社長から課された仕事が成功してから、私たちの関係を公表しようということで、意見が一致したからだ。
彼はお迎えの車、私は駅までの道を徒歩で進んでいく。すると、数分歩いたところで祐一さんと出くわしてしまった。
彼はなぜか、歩道の隅で立っている。誰かを待っているのか……。
「よお、彩奈。やっと会えた。お前さ、いつもどうやって帰ってるの? 専務の車?」
ニッと笑った彼は、大股で私の側へやってきた。”やっと会えた”って、まさか私を待ち伏せをしていたの?
驚きよりも恐怖が込み上げて、強張った表情で身を翻そうとする。だけどそれを阻まれるように、祐一さんに腕を掴まれてしまった。
「おっと、逃げなくてもいいだろう? お前の会社、随分と強気だな。俺からの取引中止の申し出も、すんなり受けたんだもんな」
なにが言いたいんだろう……。挑発的な言葉に、思わず言い返しそうになる。
だけど、うっかりでも久遠寺グループのことを話すわけにはいかない。
口を滑らす前に、早く祐一さんから離れてしまおう。
「私は、あくまで専務秘書です。会社の意志決定に関しては、詳しく知ることはありませんから」
「そうかな? 専務の恋人なんだから、いろいろ教えてもらえるだろう? この先、専務はなにを考えてる? 教えてくれないか?」
あくまで冷静にそう言う祐一さんに、やっぱり彼が私に愛情なんてないと確信する。
私に近づいてきているのは、未練があるからじゃない。
アイシー&ビーの内部事情を聞きたいからなんだ。
「教えるわけないじゃないですか。だいたい、そんなに気になるなら、どうして取引をやめるなんて言ったんですか?」
彼の手を振りほどき、キツイ視線を向ける。すると、祐一さんは無表情で淡々と言った。
「だから、それは俺の条件を呑まなかったから。彩奈が、俺とよりを戻さなかったからだよ」