イジワル専務の極上な愛し方
「ちょっと、祐一さん⁉︎ やめてください!」

キスをされる……。それが分かって、反射的に顔をそむける。腕を掴まれているから、彼の体を押し返せない。

まさか、祐一さんがこんな強引なことをするなんて、信じられない……。

学生の頃は、本当に爽やかな頼りになる素敵な人だったのに……。

悲しくて、情けなくて、涙込み上げ頬を伝う。

「泣いてる姿もそそられるな。彩奈が連絡先を変えて、本当に困っていたんだ。お前と話したくても、それができなくて」

「私には、未練がなかったからです。祐一さんからの連絡を、待っていませんでしたから」

このまま、祐一さんにキスをされてしまうの……?

泣き叫んでも、賑やかな通りには声が届かない。だいたい、こんな場所に私たちがいるなんて、気づかれにくい。

だから、祐一さんは連れてきたのだろうけど……。

「ずいぶんな言い方だよな。付き合ってた頃は、可愛げがあったのに。専務に毒されたんじゃないのか?」

どうして、翔太さんを悪く言うの。どうせ、祐一さんに不本意なキスをされるなら、とことん抵抗してみよう。

顔を祐一さんに向け、ありったけの嫌悪に満ちた目で見た。

「可愛げがないのはお互い様です。でも翔太さんを、けなさないでください。翔太さんは、私に誰よりも愛をくれます。大切にしてくれています。祐一さんが言うような人じゃない」
< 95 / 107 >

この作品をシェア

pagetop