生真面目先生のちょっと大人の恋の話
とにかくパニック状態で、気ばかりが焦って、何も考えられない。

確かに自分の目で見たはずなのに、その光景が目に焼き付いているのに…。

まるで夢の中に居たような…、何か幻覚でも見たような気がする。

そこにラインの着信を告げる音がした。

-済まない。今日は急用で行けなくなった。-

私はそれを確認すると、自分の中から何かが抜けていくような気がした。

自分ではびっくりするほど、自分が空っぽになった。

そしてお腹が空いている事に今更ながらに気が付いて、おもむろにカレーを温める。

鍋の中をお玉でかきまぜながら、ふっと目を閉じた。

ダメだ…。

涙があふれて来て、カレーの中に落ちていく。

私は慌てて火を止める。

両手で涙を拭く。

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