生真面目先生のちょっと大人の恋の話
将人は深々と頭を下げる。

あまりの突然の将人の行動に私は驚くだけだ。

「でもな、俺はその事についてはちゃんと話をするつもりだった。…体調を崩したのは俺のせいだとうぬぼれてもいいか?」

将人は私に近づいて、座っている私を見下ろす。

「あんな大事な日に行けなかった事をすごく悔いていた。実はあの次の日の朝、ウォーキングの時間に朝弥の家に行った。でも…。」

将人は上を向いて、大きな溜息をつく。

「家の中で何か気配はするのに、誰も出て来なかった。俺はどうすることも出来なくて戻った。そして学校で朝弥を何とかして捕まえようと待っていた。」

そして将人はもう一度私に視線を合わせると、私の頬をそっと触れる。

将人のその弱々しい表情に私は抵抗が出来ない。

「朝弥が熱を出して学校を休むなんて、よほどの事だと思った。保健室で横田先生に事情を聞いて、そのまま走り出しそうになった。でも横田先生は帰りにも寄るから、その時の方が良いと説得されて…。」

将人の手が震えている。

「まさか会う事も出来ずに追い返される事になるとは思わなかった。」

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