生真面目先生のちょっと大人の恋の話
一番痛むところを押さえられ、私は声を上げてしまった。

「ちょっと待って下さいね。」

その人は自分の持っている水筒の氷を出して、タオルでくるんだ。

「あんまりきれいじゃなくて申し訳ないですけど、しばらく冷やしましょう。」

その人の真剣な顔つきに私はだまって従うのみだ。

足の火照りに氷の冷たさが嬉しい。

「気持ちいいでしょ?」

その人は間が持てなかったのか、そんな事を話しかけて来た。

「ええ。でも時間を取ってしまって申し訳ないです。疲れているから、すぐにでもお帰りになりたかったですよね。」

私はふくらはぎに添えられているタオルを見た。

そしてその人の手を。

「手が冷たくないですか?もう大丈夫なので…。」

私がそう言いかけると、その人は笑った。

そろそろ参加者も家路に向かっているようで、人がまばらになって来た。

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