生真面目先生のちょっと大人の恋の話
「こうすれば、気持ちは落ち着きますか?」

私は吉永先生に声を掛けていた。

「悪い、落ち着くまで少しこうしていてくれ。」

吉永先生の身体からすっと力が抜けた。

膝の上の握られていた手が緩められていく。

私の肩に額を乗せる吉永先生。

もしかして…、泣いている…?

でも吉永先生は声を発することはなかった。

しばらく静かな時間が流れた。

「もう大丈夫だ。済まなかったな。」

顔を上げた吉永先生に、私は腕を解く。

「30歳にもなると、いろいろな事がありますよね…。」

私は何となくつぶやく。

「そうだな。」

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