憧れのアナタと大嫌いなアイツ
柊の車に乗せられて
着替えを詰め込んだスーツケースを持って
出掛ける
「もう25歳だから心配はしないけど
返品は受け付けないから」
そう言って見送ってくれた両親
「返品しません」
なんてそれに乗っかる柊
私はただただ恥ずかしくて俯いていた
駐車場に停めていた車に乗ると
「やっと二人きりだな」
フワッと微笑んでシートベルトを締めると
滑るように走り始めた
あのお屋敷・・・
長谷川流を思い出しながら
見えない重圧に小さくため息
でも、柊と付き合う以上避けては通れない道だからと少し拳を握ってみた
その決意を揺るがしたのは
ーーどこ?ーー
街のタワーマンションに到着すると
地下の駐車場で車が止まった
「ここ、俺ん家」
「え?」
考える間もなくスーツケースを持った柊は
一階行きのエレベーターへ手を引いた
「地下からは一階までのエレベーターしかないんだ」
「へぇ」
一階で降りると木村さんというコンシェルジュに出迎えられた
「お帰りなさいませ」
「登録頼む」
出入りする為のカードキーとセキュリティの説明を受けた
エレベーターは一番端の上層階専用
更にカードキーがないとボタンが押せない
余りの豪華さに不安が過ぎる
それを包むように手を繋いで聞いてくれる柊は
「これでここに住めるな」
ニッコリ笑うとエレベーターに乗り込んだ