憧れのアナタと大嫌いなアイツ
・・・・・・



「お目当て買えたね」


2人共両手に下げた紙袋に足元をふらつかせながらエスカレーターの手すりに掴まっているとリビングのフロアが見えてきた

フワリ漂う花の香りに視線を動かすと
【長谷川流作品展】大きな看板が目に飛び込んできた


「ちょっと麻美寄り道」


「良いよ」


確か長谷川流ってうちの取引先だったと思い出したのも1つの理由だけどアレンジメントの資格を持つ私にとっては違う意味でのアレンジを見られるチャンスなのだ

ま、本物相手に[アレンジ]なんて言い方は間違っているとは思うけどね


ゲートをくぐると正面に待ち受けていたのは大きな流木を花器に見立てて生けた作品


いつもは『花のことはサッパリ分かんない』って口癖の麻美も余りの迫力に言葉を失っている


「「凄いね」」


同時に呟いたのが可笑しくて漸く中へと足を動かす

小さな作品達は生徒さんだろうか
通路の両端に所狭しと並んだ花達は花道教室の教え通りに生けられた固い印象


「花乃!あれ!」


麻美の指差す方へ視線を動かすと


「凄い」


会場の一番奥に鎮座する
大きな壷に生けられた大作が目に飛び込んできた


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