憧れのアナタと大嫌いなアイツ
「ほら」
動けない私の手を掴むとスタスタと歩き始めた室長
「・・・っ」
ーー花乃ちゃんの次は手繋ぎーー
もはや私の錯覚を誰が止められようか?
真っ赤な頰と同じように熱を発する手
室長に繋がれている手を見ながら緩む頰
お花畑を手を取り合って笑う私と室長の妄想が現実になったように見えない蝶がヒラヒラ舞う
少し早足で室長の歩幅に合わせながら
斜め上の横顔をそっと盗み見た
「・・・っ」
「どうした?」
こっそりのつもりがバレてしまうなんてドジ
「・・・い、いえ」
慌てて頭を左右に振って何でもない風を装う
頭ポンポンも名前呼びも手繋ぎもホントは聞きたいのに
想像している答えと違ったらどうしようと思うだけで口籠る
それに・・・
社内恋愛なんてリスクしか思い浮かばなくて
壁を作って気持ちを誤魔化す
でも
もう少し・・・
もう少しだけ・・・
勘違いしてもいいですか?
憧れの室長に心毎近付き過ぎないように背筋を伸ばした