憧れのアナタと大嫌いなアイツ
「朝っぱらから何しに来たんだ」

藤堂室長から聞こえた低い声に驚いて顔を上げると

「え〜鷹也が心配で来てあげたのに」

唇を尖らせて駄々っ子のように肩を揺らす泉さんが目に入った

ーーこのままじゃ喧嘩になっちゃうーー

私ごときが此処に居ることで二人の甘い雰囲気を壊す訳にはいかない
彼女が居ながら他の女性を自宅に泊めるなんて・・・
私なら絶対に許さない

だから・・・

「あ、あのっ」

ーー何とか止めなければーー

「すみません、私が酔い潰れてしまったせいで・・・お二人のお邪魔をしてしまって」

何度も頭を下げながら

「す、すぐに帰りますっ」

視界の隅に見えたバッグを掴む
更に頭を下げてこのままフェイドアウトするつもりで後退りしていると

「ぶっ、ハハハハハ」

泉さんが大きな口を開けて笑いだした

「・・・え?」

「ひゃ・・・いやフフ、ごめんなさい笑うつもりは無かったんだけど、あなた必死なんだもの」

目尻の涙を拭いながらもクスクス笑いが止まらない様子に頭をハテナが回る

「ほら、琴音が変なこと言ったり笑ったりするから花乃ちゃん困ってるだろ」

顎をシャクった藤堂室長

変なこと?私が困る?この二人の関係が謎に包まれてきて更に固まる

「あなた鷹也と私が付き合ってるから早く此処を出て行かなきゃって思ったでしょ?」

少し笑いが落ち着いた泉さんのドンピシャな答えに声も出せずにコクコクと頷く

「ほら」

藤堂室長と泉さんは顔を見合わせてフフと笑い合った



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