憧れのアナタと大嫌いなアイツ
頭の中を簡単に独占してしまう藤堂室長との予定があるから・・・
すぐお花畑へ駆け出してしまう頭の中を切り替えるためにブンブンと左右に振る
「小柳さん、子供みたいね」
「へっ?」
すぐ後ろから聞こえた声に振り返ると湯気の立つカップを持ってヒラヒラと手を振る2つ上の中田先輩だった
「・・・あ、いや、その」
「フフッ、いつまで経っても可愛い」
25歳で“可愛い”なんて喜ぶべきなのか考えるよりも先に一瞬で真っ赤になったであろう頰を両手で挟んで離れて行く中田先輩の背中を見送った
ーーダメダメーー
お花畑を振り払って集中しなければとパソコンに向き合う
そのお陰か?そこからは藤堂室長に声を掛けられるまで壁の時計のことは忘れていた
* * *
社用車に乗り込んでスマホ片手にナビを設定しようとする指先を藤堂室長の手が遮った
「先に打ち合わせも兼ねてランチへ行こう」
そう言ってニコリと笑った薄い唇に落ち着いていた心臓が暴れ出す
「・・・はい」
誤魔化そうと俯いた頭をククっと喉を鳴らして笑った藤堂室長の手が撫でた
「不謹慎だけど花乃ちゃんって可愛いよな」
頂きました!本日2回目の“可愛い”
なんて喜んでいる場合ではなくて・・・
もちろんこれはからかわれていると理解できるのに藤堂室長から言われたってことだけでそのまま素直に受け止めようとする自分がいた