憧れのアナタと大嫌いなアイツ
藤堂室長に“任せて”と言われて着いたのは人気のイタリアン
白と青を基調とした外観は洗練されている
「ここ、予約取りにくいって・・・」
タウン誌や情報番組でも取り上げられるこの店はランチでも予約が取れないと聞いたことがある
「らしいな」
そんなこと関係ないと言わんばかりの藤堂室長の後に続いて階段を上る
幅が広めの階段には既に行列が出来ている
右の手摺に沿って出来る行列は並び専用らしく女性客で階下までギッシリ
藤堂室長が横を通り過ぎると
「見て・・・」
「カッコいい」
「素敵」
その視線を独占している
もちろんその視線の後に続く私に向けられる
痛い程の声をなるべくきかないかようにやり過ごした
半個室に通されるとホッとして気付かないうちに吐き出したため息を笑われる
「どうした」
「あ、いえ、なんでもありません」
イケメンの彼氏にアレ?そんな言葉が耳に入ったなんて自虐的に言える程強くもなくてなんとか誤魔化すつもりだったのに
どうしてやり手の上司って部下の心を慮ることができるのか・・・
伸ばされた手が頭をクシャクシャと撫でただけでささくれ立った気持ちが凪いだ