憧れのアナタと大嫌いなアイツ

「こちらでお待ちくださいませ」

通された部屋は意外にもソファが並べられクラシックな調度品の数々と部屋の中央の壁に目を惹く暖炉が鎮座する応接室だった


「頭の中で話す内容を並べておくといい」

隣でふわりと微笑む藤堂室長にこの部屋に来た意味と違うドキドキが生まれる

「・・・はい」

頭の中に増殖しそうなお花畑の芽を摘み取り
企画書を思い浮かべた

「フォローはするから」

背筋を伸ばした藤堂室長の横顔をチラリと見て、同じように背筋を伸ばし下腹に力を入れた

軽いノックの後に開かれたドアから入ってきたのは和服姿の女性

「お待たせしました」

立ち上がってお辞儀をすると
目の前に立った女性は“あら”とこちらを見た

「あなた確か・・・デパートで」

「あ、はい、その節は素敵な作品を見せて頂きましてありがとうございました」

「お礼を言うのはこちらよ?最近は若い子の足が遠のいてね」

少し渋い顔を見せた女性は長谷川流の先代家元夫人で息子さんに代替わりした今でも取り仕切っている長谷川史代さん

現在の家元のお母様

立ち話もあれだからさぁどうぞと促されてソファに座ると

絶妙なタイミングでお茶が運ばれてきた

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