憧れのアナタと大嫌いなアイツ

トラウマ



何年も触れないように何重にも包んで心の隅に追いやってきた傷(トラウマ)の原因

あれから7年も経ったはずなのに瞬時に思い出すなんてなんて・・・

忘れようとしても忘れられなかったというのが正解かもしれないけれど

あの頃とは幾らか大人になった顔

少し長めの黒髪とキリッとした眉
切れ長の瞳は憂いを帯びたような漆黒の黒で視線が合っただけで全てを見透かされているようで怖い
背筋がゾクリとする程の美しい顔は
私にとっては不快感しかない

そして・・・

たったひと声・・・

“オマエ”と
たったひと声聞いただけで
身体中に電流が走った

あの頃の感情をひとつも忘れていないことにため息



・・・・・・
・・・





「・・・ちゃん!」
「・・・のちゃん!」
「・・・花乃ちゃん!」

「あ、は、はい、すみません」

ボンヤリする頭で運転席に座る藤堂室長を見る

「大丈夫か?」

「・・・なんとか」

あれから何をどう話したのか頭に残っていない
明らかに違う態度の私を気遣うように話を終わらせてくれた藤堂室長の横顔だけは覚えている

ーーどうしてーー

考えても無駄なことが思考を支配して
声を出そうとすればする程震える肩を抑えようと両手で自分を抱きしめる

「少し寄り道して行こう」

車が止まったのは森林公園の駐車場だった

ちょっと待っててと車を降りた藤堂室長
戻った時には両手に缶コーヒーを持っていた

「ほら、甘いやつ」

「ありがとうございます」

貰った缶コーヒーのプルタブを引けない程震えた手にサッと手を重ねた藤堂室長
驚いて顔を上げると

「おいで」

フワリと藤堂室長の香りに包まれた
“今だけな”と頭上から降った声がとても温かくて胸が熱くなる

「泣いて良いよ」

「え?」

「ずっと泣きそうな顔してる」

藤堂室長が放った言葉は私の涙腺を崩壊させるには充分で

頭を撫でられながら
弟の花流以外の男性の胸の中で初めて泣いた








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