憧れのアナタと大嫌いなアイツ
学園祭当日
待ちきれないと前日からお泊りの麻美と2人でクローゼットの扉を全開で唸っていた
「花流くんってほんとシスコンだよね」
「な〜にそれ、そんなこと言ってないで次!」
鏡に映る自分に何度も着せ替える
“可愛くして来いよ”って言われたことよりも
あの“花流”のお姉ちゃんとして可愛く行かなきゃって思いの方が強くて
かれこれ一時間も着せ替えごっこを続けている
「ほら、早くしないと出番に間に合わないよっ」
何度かのやり取りの後でコーディネートを終えると巻き髪を仕上げた
。
街から二駅離れた所にある桐葉第一学園に到着すると早速着ぐるみの呼び込みに声をかけられた
正門には学園祭のアーチが作られ
ごった返す人と美味しい匂いや歓声に出迎えられる
「花乃、先ずはお腹いっぱいにしよ〜」
はしゃぐ麻美と手書きのマップを片手に進む
イングリッシュガーデンの様な中庭に沢山の屋台が出ていて
呼び込みに誘われる
フランクフルト、焼きそば、たこ焼き・・・
迷っている出鼻を挫くのは麻美
「コンサートに行くのにケチャップが付いてたらどうする?」
とか
「青海苔は笑顔の敵よ?」
とか
『お腹いっぱいにしよ〜』ってはしゃいでいたのはほんの数分前だけど?ってツッコミたい気分を飲み込んで
「じゃあ何なら良いの?」
半ば折れそうな気分は声を落とした
「そ〜ね〜」
屋台をグルリと見渡して
「あれ!」
指差した先には
【カキ氷】の旗が風に揺らいでいた