憧れのアナタと大嫌いなアイツ
掴んだ腕を振りほどこうとするのにビクともしない
「あ、あの・・・」
「困ります」
「どこへ・・・」
「離して」
足の長さの違いかスタスタと歩くシュウに半ば引きずられるように早足でついて行く
見上げた背中に何度目かの声をかけると急に止まった
「痛っっ」
不意打ちすぎて大きな背中に鼻を打つけてしまった
掴まれていない手で鼻を覆う
「ドジだな」
クルッと振り返って掴んでいた腕を離したシュウ
「・・・っ」
離れたと思ったのは間違いで
校舎の壁に背中を押し付けられた
すぐ目の前に立ったシュウの長い腕が囲うように伸びた
もしかして・・・壁ドン?
色々が頭をよぎって状況が飲み込めない
離れて欲しいのに距離が近すぎて声が出ない
顔を見上げる勇気は出なくて
胸元の緩められたネクタイを見つめる
「名前」
「・・・」
「名前」
「へ?」
「アンタの名前」
ここはホントの名前を言うべき?
こんな時にどうして良いのか思い浮かばなくて
でも・・・【怖い】って思いが強くて
「・・・はな」
嘘を教えた
「はな?」
「うん」
「俺は柊(シュウ)」
自己紹介の為に壁ドン?
彼氏いない歴年令の自分には少々難易度が高すぎて上手くかわせない
「はな」
「ん?」
迂闊にも頭の上から降ってきた声に反応して
至近距離を忘れて見上げてしまった