憧れのアナタと大嫌いなアイツ
そして・・・伝えるべきか躊躇ったキスのことも
気がつけば話していた
直ぐ傍にいる花流の顔がどんどん険しくなってきて
「アイツ」
握りしめた拳が震えている
「ハル・・・」
花流の手に触れると険しい表情が緩むと同時に今度は眉が下がった
「ごめんな、守ってやれなくて」
伸ばされた花流の指が頰に触れる
あ・・・
濡れた指・・・
気づかないうちに溢れた涙に
泣いていることに気づいた
「一緒に居れば良かった・・・」
今にも泣き出しそうな顔をする麻美
「麻美さんのせいじゃないですよ」
麻美に笑顔を向けた花流は“もう大丈夫”と頭を撫でると立ち上がった
「ねぇ、気がついたかしら?」
シャーと開かれたカーテンから顔を覗かせたのは白衣を着た先生
「あ、はい」
「お迎え頼める?」
腕時計を見ながら花流を見る先生
「はい、もう父が来る頃だと思います」
「じゃあこれに名前だけ書いておいてね」
バインダーを渡された
挟まれていたのは【保健室利用】と書かれた紙
既に利用理由は埋められていて
氏名の欄だけ空いていた