憧れのアナタと大嫌いなアイツ
家に着いて麻美を見送ると
忘れようとしていた記憶が蘇る
テーブルの上にアクセサリーを並べてみても
気分は車の中ほど上がらなくて
ため息ばかり吐き出してしまう
「花乃」
ノックもせずに開かれたドア
「大丈夫か?」
濡れた髪を拭きながら心配そうな顔をする花流
「うん、なんとか」
無理矢理笑顔を作ってみせて
お風呂に入ると部屋を出た
湯船に浸かると思い出す漆黒の瞳
目を合わせただけで引き込まれそうに強い眼差しだった
消したいのにどうしても蘇る
“目ぇ閉じろ”
何度もリフレインする低い声
間近で迫るシトラスの香りと合わせるように息が詰まる程早くなった鼓動
そして・・・
フワリと触れた温もり・・・
唇に指で触れる
「ダメ、ダメっ」
消えない感触を振り切るように
何度も顔にパシャパシャとお湯をかけた