憧れのアナタと大嫌いなアイツ

拉致同然に連れ出されて20分
車が止まったのは・・・海

運転席に座る彼は“着いたら話してやる”と言った割に黙ったままで

シンとした車内が落ち着かない気分を膨らませ不安になる

首を捻って隣を見る勇気までは出なくて
ひたすら俯いたまま居ると

「なぁ、花流と結婚したのか?」

漸く口を開いた一言目がこれ

ーーなんで花流?ーー

花流に結びつく何かを探そうと記憶をフル回転させる

けれど・・・

瞬時に思い出せるはずもなく

なんでそう思うのかを問いかける言葉も出せなくて

“ん?”と至極簡単な質問返し

「あの時も花流は俺の質問には答えずに当然のように【はな】を連れ去った」

【はな】というキーワードで
鮮明に蘇るあの時の状況

私の嘘が今も生きていることと
花流の仕掛けが更に広がっていると気付いた

確かに7年前の一件で男性と距離を置くようになったけれど
それが嘘をついて良いことには繋がらない

「結婚は・・・してない」

「ん?」

「だから、結婚はしてない」

「だって」

“これ”と差し出された名刺は私が長谷川流に出向いた時に渡したもので

【企画室 小柳花乃】

「苗字・・・花流も小柳だろ?」

「あ、それは・・・」

まさか苗字が同じで結婚と結びついたとは思わなくて焦る

「それは?」

「花流は・・・弟なの」
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