憧れのアナタと大嫌いなアイツ

「あ?」

急に大きな声が出されて
肩がビクッと震える

「あ、ワリィ」

私の変化に気づいてくれた事に驚いて首を横に振った

「ってことは、花流の姉ちゃん?」

「うん」

「ハハハ、そっか・・・ハハ」

突然笑い始めたのに驚いてチラッと隣を見ると

笑っているのに泣いているみたいな酷く傷ついた顔をした柊がいた

「・・・」

それだけ
ただ・・・それだけのこと

ちょっと傷ついた顔を見せただけなのに

私もツキンと痛む胸

ーーどうしてーー

いや・・・
本当は色々聞きたいことだらけなのに
答え合わせが怖くて躊躇う

「悪かったな」

「え?」

「今日も7年前も」

そう言うと右の手首にそっと触れた

ハッとして手を引くと柊は“ごめん”と顔を歪ませた

連れ出された時に掴まれた手首は少し赤くて
それを気にしてくれていると分かったけれど

男性に触れられるのは慣れなくて
オーバーアクションになってしまう

「あ、いや、あの、大丈夫だから」

「けど、赤くなってる」

「触れるとそうなるから気にしないで」

まるで触るなと言わんばかりの答えに

「ごめんな」

柊はまた傷ついた顔をした




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