憧れのアナタと大嫌いなアイツ


お昼休みが終わる頃には会社に送り届けられた私

お昼ご飯を食べ損ねたとかよりも
傷ついた柊の顔が頭から離れなくて

午後からの仕事をどう終わらせたのか
気がつけば終業のチャイムが鳴っていた

「大丈夫?」

更衣室で声をかけてきた麻美

「うん」

「心ここにあらずって感じだね」

「え?・・・そんなことないよ」

その場を取り繕ってみたものの
朝とは明らかに違う態度に

「今日は早く帰って寝なよ」

「うん」

なんだかんだ私の変化に気づいてくれる麻美が好きだなぁなんて思いながら一緒にエレベーターに乗った

始業と終業の時間帯には3基あるエレベーターはどれももすし詰め状態で
それを分かって隅に囲ってくれる麻美は優しい

チンという音と共に解放されると
一階のロビーは騒ついていた

「すっごいイケメン・・・」
「誰のお迎え?」
「話しかける?」

悲鳴にも似た声で溢れていて驚いて
麻美と二人で顔を見合わせた

「「なに?」」

分からないけれど皆んなの視線の先は
ビルの正面入り口に注がれていて

騒つく女子社員を避けながら進むと

「・・・っ」

自動ドアの前に停まっている黒塗りのスポーツカーと
その脇にもたれるように立っている柊が目に入った




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