憧れのアナタと大嫌いなアイツ

サッと目の前に差し出された手

ーー掴んでなるものかーー

意地っ張り精神がムクムクと湧き上がり
その手を避けながら降りる

「素直じゃないのな」

ククッと笑うと今度は手を繋がれた

振り解こうと手を振ってはみるものの
反対に握った手に力を入れられて
更に外せなくなってしまった

「あの・・・困る・・・」

一芝居打つように泣きそうな顔をしてみたものの
柊はクククと笑うだけで一向に手は離して貰えず

その間にもロビーを抜けてエレベーターに乗り
漸く手を離して貰えたのは
フレンチレストランの個室に通された後だった

「はな、好き嫌いある?」

「特には・・・」

何を普通に答えてるんだ私と思い直して
頭を左右に振ると

目の前に座った柊は真っ直ぐ私を見て

「はな」と名前を呼んだ

キャンドルの灯りでオレンジ色に染まる瞳が揺らいでいて

息を飲むように綺麗

キュッと締め付けられる胸を落ち着かせるようにトントンと手を置いて

ーー静まれ、静まれーー

副将軍様の世直し旅かよって突っ込んで
なるべく柊に囚われないように
ワザと頭の中をコミカルにしてみた

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