憧れのアナタと大嫌いなアイツ
それなのに
嗚呼、それなのに・・・


目の前の柊は射抜くような微笑みで
真っ直ぐこちらを見ると


「はな、ずっと、ずーっと好きだった」


今世紀最大級の雷にやられるくらいの衝撃をぶつけてきた

その声は低くて・・・甘くて・・・
瞬時に私の心臓を鷲掴みにしてしまう

ーーち、違う!私はこいつに!ーー

惑わされないようにスカートの裾をギュッと掴んで

「へ、へぇ」

それがどうしたの?風に答える

「俺が告白してんのに、なんだ?その軽い返事は」

ピキッて音が聞こえそうな程眉間にシワが寄っている

でも・・・
ここで負けちゃダメ!

奮起するように

「私・・・【はな】じゃないし」

「は?何言ってんの?」

一瞬眉間のシワが消えて焦りが見え始めた

「だから、私の名前【はな】じゃないし」

「は?【こやなぎはなの】だろ?」

「違う」

「嘘・・・ついたのか?」

「7年前のあれを信じたの?」

「普通信じるだろ」

段々と肩と眉が下がった柊を見て
仕返しとばかりに声を被せた

「初対面なのに強引に連れ出して、勝手にキスまでするような人に本当のことなんて教えるわけないでしょ!それに・・・」

「ん?」

「それに・・・あれから私、男の人が怖くて、ちゃんと恋も出来なかった、だから!そんな傷ついた顔されても悪いことしたなんて思えない」

ドンとテーブルに手を着いて立ち上がると

「さよなら」

バッグを掴んで店を飛び出した


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