憧れのアナタと大嫌いなアイツ
「花乃・・・」
「ん?」
どのくらいそうしていたのか・・・
柊の腕の中に抱きしめられたまま
窓辺で夜景を眺めていた
窓に映る柊の顔は穏やかで
二人の間に流れる空気も穏やか
包みこんでくれる温もりが心地良くて
警戒心がゆっくり薄れ
「ずっと、ずっと好きだった」
今日何度目かの告白を
黙って受け止めることが出来る気持ちの変化に戸惑う
この7年間は私にとって乗り越えなきゃいけないことが沢山あった・・・
でも・・・
そのトラウマを作った張本人の腕の中にいる私は
そんなこと全て帳消しにしたの?って錯覚できるくらい心が揺れている
「花乃」
「ん?」
「帰したくねぇ、けど・・・我慢する」
「うん」
“送る”と腕の中から解放されると
途端に消えてゆく温もりが切なくて
何度も視線を合わせては微笑む
どこまでも甘い雰囲気の柊にまた心が揺らされる
自然と手を繋がれて部屋を後にすると
また助手席に乗せられて気がつけば家に到着していた
「おやすみ」
「おやすみなさい」
運転中も繋がれていた手にチュッとキスを落とした柊が視線を上げると
その漆黒の瞳に身体の自由を奪われる
ーーキスされるーー
そう思った時
ガチャと運転席のドアが開いた