憧れのアナタと大嫌いなアイツ
長い廊下を何度か曲がって階段を上って着いた部屋は

「俺の部屋」

モノトーンで揃えられた室内は
床が畳であること以外は
スッキリまとめられたシンプルな部屋

らしいといえばそれまでだけど
男の人の部屋は花流以外入ったことがなくて
肩に力が入った

「適当に座ってろ」

そう言って部屋を出て行った柊

適当に・・・って
グルリと見渡してみても
座る場所なんてベッドしかない

ーーそれはダメーー

フローリングじゃないから
畳に座ればいいと
なるべくベッドから離れて腰を下ろした

強引に連れて来られたから
バッグも離れに置いたままで携帯もない

母さんに連絡しなきゃ
また花流に心配かけちゃう

そんなことを思いながら部屋の主を待っていると

コーヒーカップの乗ったトレーと
私のハンドバッグを持った柊が帰ってきた

「なんでそこ?」

座っている場所を聞かれて“なんとなく”と答える

「取って喰ったりしないからここに座れよ」

ポンポンとベッドを叩く柊

「花乃の嫌がることはしねぇ」

散々強引なことをしてきた口が言うのかと驚いて見上げると

「恋愛初心者だもんな、クッ」

クシャリと顔を崩して笑い出した





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