憧れのアナタと大嫌いなアイツ

「な、なによ」

そんなに笑うことないじゃん・・・なんて
口を尖らせてしまう

「ほら、来いよ」

あくまでも上からの柊の態度もムカつくけど
笑われてまで通す意地でもないかと素直に移動する

「飲む前に家に連絡しとけよ」

「あ、うん」

「【遅くなります】いや・・【帰らない】か」

「は?」

「ククッ、嘘だ。花乃は干物だな」

「干物?」

「25歳まで彼氏もいなかったんだから干からびてるだろ」

破顔して笑い出した柊

「だ、誰のせいよっ」

苛立ちが言葉に乗っかって語気が強くなると

それまで笑っていた筈の柊の顔が急に戻った

「俺、俺の所為。。だから、責任取るよ」

こちらを射抜くような真っ直ぐな視線に
今度は違う意味で鼓動が煩くなる

サッと肩を引き寄せられて
間近に見えた柊の顔

アッ、と思った時には唇が重ねられた後だった

強引だけど優しく触れてくる柊のキス

何度も啄むように触れてはオデコを合わせる

「早く俺に堕ちろ」

漆黒の瞳の中に紅い炎が揺れた気がした

「花乃、好きだ」

「好きだ」

「大好きだ」

愛を紡ぐたびに深くなる口付け
逃げようとしても頭の後ろに回された手が阻み

身体ごと溶け出しそうな感覚に陥った





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