憧れのアナタと大嫌いなアイツ
柊のスポーツカーの助手席に乗って
着いたのは古くからある洋食屋さん
うちの家族も大好きなお店
格式高い煉瓦造の建物で全席個室になっていることもあって完全予約制なのに・・・
「予約してたの?」
「あぁ」
腰に手を回されてエスコートされながら
仕事用のスーツ姿の自分にため息
「どうした」
そんな些細な変化に気付いてしまう柊
なんでもないと頭を左右に振ってみたものの
首を傾けた柊に見破られてしまう
「花乃は笑ってろ」
服なんてどうでも良いと、それより一緒に居ることを嬉しいと言葉をくれる柊
この場合はこうあるべき!なんてくだらないことに囚われ過ぎな私の肩から力が抜けた
ガーデンパーティーも開かれる広い庭を眺めながらの食事は美味しくて、楽しくて
気が付けばデザートも終わっていた
「花乃」
頬杖をついてこちらを向く柊は
終始ご機嫌でなんだか私も嬉しい
「今夜は帰してやる」
「うん」
「けど、明日は帰さねぇ」
「えっ」
「一日だけ待ってやるから覚悟決めろ」
「・・・。」
どこかフワフワした状態のまま
気が付けば家の前に到着していた
「じゃあ、明日な」
左手を取って薬指に口付けた柊は
「予約済み」と囁いて
帰って行った