憧れのアナタと大嫌いなアイツ

大慌てで支度を済ませると電話を掛けた


「おはよう」

「おはようございます」

どうやら電話した時には家の前だったようで
支度が出来た途端“外に出て”とメッセージが届いた

「ごめんな、休みの日に」

運転しながらチラ見する藤堂室長

「いえ、大丈夫です」

休日の室長と会えるなんて激レア!
少し前の私なら確実に浮かれていたはず

それなのに

今日は“どうして”とか“なんで”の文字が頭をグルグル回って
休日に連れ出された理由を探っていた

近くのコンビニの駐車場で止まると
室長は“ちょっと待ってて”と店へ入り
しばらくするとコーヒーを2つ持って戻ってきた

“はい”と手渡されたホットコーヒーを両手で包みながら

なかなか話さない室長を見ていると

「昨日・・・」
と切り出した

「長谷川流の家元から花乃ちゃんに手を出すなと言われた」

「え?」

急に爆弾を投下されたような衝撃を受ける
柊と話した後の室長の表情の理由を理解した

「聞いても良いか?」

「はい」

「家元と付き合っているのか?」

麻美流に言えば・・・付き合ってる
私の気持ちの中では・・・まだ

どう言えば良いか悩む間に
「聞いて欲しい」と前振りした室長は
コーヒーを飲み干すと
ハンドルを持ったまま話し始めた



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