先生と私の見えない赤い糸
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引越しの荷物があらかた片付いた頃、僕は奈美に手紙を書いた。自分の気持ちを整理するためでもある。
書きながら途中で筆が止まったりを何度も繰り返しながら、今まであった出来事を思い出す。
NHKネタで盛り上がったこと。僕の言葉に文句しか言わなかったこと。少しずつ書くことが楽しくなったのか、笑顔が増えてきたこと。
他にも、ふてくされた顔を何とかしたくてオデコにキスをしたら、真っ赤な顔をして照れていたこと。髪形を変えた僕を見て、ゲーッという表情をしていたこと。睨み倒しそうな勢いで見つめながら、大好きだって言ってくれたこと――すべてが僕の中で、愛おしいという想い出になっていた。
「寂しい思いをさせてしまうが、きっとまた巡り逢える自信があるんだ。身勝手な僕だけど奈美……どうか待っていて欲しい」
そんな気持ちを込めて手紙をしたためる。そして愛用していた国語辞典を手に、奈美の自宅に向かった。
僕の想いを秘めた約束は、果たされずに終わってしまうかもしれない。だけどゼロではないのは確かだ。そんな僅かな願いを込めて国語辞典をポストに投函し、誰にも見つからないようにすべく、足早に自宅に戻ったのだった。
引越しの荷物があらかた片付いた頃、僕は奈美に手紙を書いた。自分の気持ちを整理するためでもある。
書きながら途中で筆が止まったりを何度も繰り返しながら、今まであった出来事を思い出す。
NHKネタで盛り上がったこと。僕の言葉に文句しか言わなかったこと。少しずつ書くことが楽しくなったのか、笑顔が増えてきたこと。
他にも、ふてくされた顔を何とかしたくてオデコにキスをしたら、真っ赤な顔をして照れていたこと。髪形を変えた僕を見て、ゲーッという表情をしていたこと。睨み倒しそうな勢いで見つめながら、大好きだって言ってくれたこと――すべてが僕の中で、愛おしいという想い出になっていた。
「寂しい思いをさせてしまうが、きっとまた巡り逢える自信があるんだ。身勝手な僕だけど奈美……どうか待っていて欲しい」
そんな気持ちを込めて手紙をしたためる。そして愛用していた国語辞典を手に、奈美の自宅に向かった。
僕の想いを秘めた約束は、果たされずに終わってしまうかもしれない。だけどゼロではないのは確かだ。そんな僅かな願いを込めて国語辞典をポストに投函し、誰にも見つからないようにすべく、足早に自宅に戻ったのだった。