冬至りなば君遠からじ
君との再会
放課後、校門の脇にまふゆさんが立っていた。
「あ、先輩、私はここにいますよ」
いや、待ち合わせなんかしてないんだけどな。
「あら、仲良いじゃない」と凛が僕の腕をつつく。
刺々しかった朝と違って、礼儀正しくまふゆさんが凛に頭を下げる。
「凛先輩、さっきはいろいろ教えてくださってありがとうございました」
え、なんのこと?
二人はスマホを見せ合って、にやにやしている。
いつの間に連絡先交換したんだよ。
「じゃあね、朋樹。まふゆちゃん、こいつのことよろしくね」
「はい、先輩、おまかせください」
凛は高志と手をつないで踏切を渡っていった。
今日もガストでパフェか。太るなよ。
僕とまふゆさんはため池の脇道を歩いた。
「あいつ、何か言ってたの?」
「朋樹先輩のこと、いろいろですよ。朋樹ヒストリー、朋樹語録」
何の講座だよ。
「小学校の音楽の時間にお漏らしをしたって」
「うわ、一番恥ずかしいやつだ」
「あ、ホントだったんですか」
うわ、墓穴かよ。
歩行者用踏切の警報が鳴る。
遮断機が下りて西唐津行きの電車が通過していく。
騒音の中でまふゆさんが僕の耳元に口を寄せて言った。
「事実なんですか?」
もうどっちでもいいよ。
「小学一年生の時、先生にトイレに行ってもいいですかって言えなくて、合唱しながら漏らしちゃった。凛がみんなに内緒で先生に伝えてくれたから、からかわれずにすんだんだ」
まふゆさんの表情が明らかに変わった。
眉が八の字になる。
そう、昔から凛は優しかった。
でもあいつも、今まで内緒にしてくれてたんだから、よりによって今言わなくたっていいだろうに。
なんで言っちゃったかな。
僕とまふゆさんの邪魔をしたいのかな。
そんなことはないか。
遮断機が上がる。
僕は向こう側に渡った。
彼女がついてくる。
若松神社の裏口まで来て僕は言った。
「それで僕のことを軽蔑して嫌いになるっていうならしょうがないよ」
彼女は優しく首を振った。
「嫌いになったりしませんよ」
僕の腕を人差し指でつつきながら微笑む。
「でもね、先輩も、少しは嘘がうまくなった方がいいですよ」
「凛の言う通り、頭悪いからしょうがないよ」
「あ、先輩、私はここにいますよ」
いや、待ち合わせなんかしてないんだけどな。
「あら、仲良いじゃない」と凛が僕の腕をつつく。
刺々しかった朝と違って、礼儀正しくまふゆさんが凛に頭を下げる。
「凛先輩、さっきはいろいろ教えてくださってありがとうございました」
え、なんのこと?
二人はスマホを見せ合って、にやにやしている。
いつの間に連絡先交換したんだよ。
「じゃあね、朋樹。まふゆちゃん、こいつのことよろしくね」
「はい、先輩、おまかせください」
凛は高志と手をつないで踏切を渡っていった。
今日もガストでパフェか。太るなよ。
僕とまふゆさんはため池の脇道を歩いた。
「あいつ、何か言ってたの?」
「朋樹先輩のこと、いろいろですよ。朋樹ヒストリー、朋樹語録」
何の講座だよ。
「小学校の音楽の時間にお漏らしをしたって」
「うわ、一番恥ずかしいやつだ」
「あ、ホントだったんですか」
うわ、墓穴かよ。
歩行者用踏切の警報が鳴る。
遮断機が下りて西唐津行きの電車が通過していく。
騒音の中でまふゆさんが僕の耳元に口を寄せて言った。
「事実なんですか?」
もうどっちでもいいよ。
「小学一年生の時、先生にトイレに行ってもいいですかって言えなくて、合唱しながら漏らしちゃった。凛がみんなに内緒で先生に伝えてくれたから、からかわれずにすんだんだ」
まふゆさんの表情が明らかに変わった。
眉が八の字になる。
そう、昔から凛は優しかった。
でもあいつも、今まで内緒にしてくれてたんだから、よりによって今言わなくたっていいだろうに。
なんで言っちゃったかな。
僕とまふゆさんの邪魔をしたいのかな。
そんなことはないか。
遮断機が上がる。
僕は向こう側に渡った。
彼女がついてくる。
若松神社の裏口まで来て僕は言った。
「それで僕のことを軽蔑して嫌いになるっていうならしょうがないよ」
彼女は優しく首を振った。
「嫌いになったりしませんよ」
僕の腕を人差し指でつつきながら微笑む。
「でもね、先輩も、少しは嘘がうまくなった方がいいですよ」
「凛の言う通り、頭悪いからしょうがないよ」