冬至りなば君遠からじ
「朋樹さ、いつもこうやってあたしの話聞いてくれるじゃん」

 聞いてるっていうよりも、聞かされているっていう方が正しいんじゃないかな。

「こういうときに黙って話聞いてくれるのって朋樹だけだよね」

 そうなのか。

 それは便利ってことなのかな。

「高志はふざけるしさ。朋樹はちゃんと聞いてくれるよね。前もさ、いつだっけ、あたしが高志と喧嘩したとき、ここに来たよね」

「中学の時だろ」

「そうだっけ。あのとき、何かむきになってブランコこいでたよね。朋樹もあたしにつきあってくれて、おかげですっきりしたんだよね」

「そうだったっけか」

 そんなふうに思われているとは気がつかなかった。

 またなんだかよく分からないことが増えてしまった。

「あの時は何で高志と喧嘩したんだっけ?」

「覚えてないな、あたしも」

「当事者だろ」

「すごくどうでもいいことだったんじゃない?」

 たぶん、そんなはずはない。

 凜はどうでもいいことで怒ったりはしない。

 僕もよく凛を怒らせるけど、それは凛にとっては絶対に譲れない何かだからこそ怒るんだ。

 それが事前に分かればいいんだけど、結構他人からすれば理由がつかみにくいところにこだわる癖があって、いまだに地雷を踏んでしまう。

 だから、そのときだってちゃんと凛なりに何か嫌なことがあったんだろう。

 それに、今回のことは訳が分からないことじゃない。

 泣いたっていいことだ。

「あのとき、あたし泣いてたっけ?」

「うん」

 次の瞬間、凛が泣き出した。

 肩を振るわせて涙を流していた。

 凛が泣いているのに僕は何もしてやれなかった。

 声を出さず、目からあふれてくる涙をぬぐうこともせず、ブランコを揺らして泣いている。

 ただそばにいてやることしかできない。

 してやれることはそれしかなかった。

 中学から高校に時が流れても僕は成長していないのだ。

 まあ、どうせ中途半端なお年頃だ。
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