冬至りなば君遠からじ
 パスタのお皿を下げに来たウェイターさんが言った。

「本日のデザートはジェラートでございますが、ピスタチオとフランボワーズどちらになさいますか」

「あたしはピスタチオで」と凛。

「じゃあ、私もそれを」と先輩。

「じゃあ、三人とも同じで」と僕。

 ウェイターさんがお皿を持っていくと、凛がいたずらっ子のような目をして言った。

「あのウェイターさんに、先輩のこと幽霊だって紹介したらどうなるかな」

「やめておきなよ。ただでさえ、場違いな高校生なんだからさ」

 反論した僕に向かって凛が口を尖らせた。先輩が言った。

「これが喧嘩というものか」

「ああ、まあ、喧嘩というほどではないですけど、喧嘩みたいなものですね」

「うちらの喧嘩も役に立つんだね」

 役に立つ喧嘩って何だよとつっこもうとした時、デザートがテーブルに並べられた。

 鮮やかな緑というよりは少し茶色が混ざったような色合いのジェラートだった。

 一口すくって凛が目を細める。

「んー、すごくおいしい。ピスタチオだよ」

 うん、これがフランボワーズだったらびっくりだよ。

「先にふわっとピスタチオの香りが広がって、その後にミルク感がくるでしょ。これは本物だよ。当たりだね」

 グルメ評論家のご意見を拝聴しながら、僕も一口食べた。

 確かに凛の言うとおりだった。

「んー、すごくおいしい」

 先輩まで凛の真似をする。

 女子高生っぽい。

「そうですよ、先輩、おいしいですよね」と凛もうれしそうだ。

 ジェラートもあっという間になくなってしまった。

< 48 / 114 >

この作品をシェア

pagetop