冬至りなば君遠からじ
いざとなると何から話をしていいのか分からなかった。
「話って何だよ」
高志の方から話を切り出した。
「いつ本気を出すんだよ」
「テストのことか?」
「この期に及んでまだごまかす気かよ」
高志は黙り込んでしまった。やっぱりダメか。
「冗談のつもりだったってごまかし続けて、凛がいなくなっちゃってもいいのかよ」
返事はない。
「僕が奪い取っちゃってもいいのかよ」
やっとこっちを見た。でも、自分と関係のないことを話しているみたいなぼんやりとした表情だった。
「おまえがそうしたいなら、そうすりゃいいじゃんか。あいつも朋樹とそうなることを望んでいるんだからさ」
「凛はそんな女の子じゃないだろ。それを僕は知っているよ。高志だって分かっているはずだ。だからおまえだって凛のことが好きなんだろ。凛のことをそんなふうに言うなよ。凛はそういうことを大事にするちゃんとした女の子だよ」
「何ガキみたいなこと言ってるんだよ」
クソガキじゃないか、僕たち。
「遠慮するなよ。あいつだって別に嫌がったりしないだろ。いつかはそうなるって思ってたんだろうし」
「じゃあ、何で高志の時は泣いてたんだよ」
「だから、俺のことが好きじゃなかったからだろ。俺はもういいんだよ」
高志が空き缶をゴミ箱に投げつける。
僕が放った缶はゴミ箱を外れて駐車場に転がった。
冬空に乾いた音が響く。
高志が拾ってくれた。
僕から離れるのにちょうどいいきっかけだったんだろう。
僕に背中を向けたまま缶をゴミ箱に投げつけた。
「話ってそれだけか。じゃあな」
「待てよ」
「なんだよ。めんどくせえな。言いたいことがあるなら早く済ませろよ」
「凛に謝れよ。ちゃんと会って話して謝れよ」
高志は僕に背を向けたまま黙っていた。
「凛はさみしくて僕に助けを求めたんだ。でも、僕がしたいようにしたって、凛の心にぽっかり空いたさみしさを埋めてやることなんてできないんだよ。おまえがやったことはおまえが責任をとれよ。高志が自分で埋めてやらないといつまでも凛はさみしいままじゃないかよ。逃げるな。なにもしないで逃げるなよ」
高志は僕からも逃げようとしていた。
僕に背を向けたまま歩き出そうとしていた。
右足を踏み出そうとしている高志の腕を僕はつかんだ。
「逃がさないよ。凛に謝れよ。ちゃんと向き合って自分の正直な気持ちを伝えろよ。キスしたいなら、そう言えよ。無理矢理じゃなく、ちゃんと気持ちを伝えて正面からぶつかれよ」
高志が笑い出した。
腕をふりほどいてこちらを向いていきなり僕を殴った。
凛にぶたれた頬がまた痛む。
今日は凛にも高志にも殴られる日だな。
僕も高志の腹を殴り返そうとしたけど、かわされてしまった。
「なんだよ、ずるいじゃないか。殴らせろよ」
「朋樹、おまえは何もできないやつだな。凛を奪い取ることも、俺を殴ることも」
「高志だってそうじゃないかよ。押し倒してびびっちゃって、やるチャンスを逃しちゃってさ」
「でも、俺はおまえを殴ったぞ。俺の勝ちだ」
どういう勝負だよ。
でも、それなら負けでいいよ。
「負けでいいからさ。凛を大事にしてやれよ。な、高志」
「話って何だよ」
高志の方から話を切り出した。
「いつ本気を出すんだよ」
「テストのことか?」
「この期に及んでまだごまかす気かよ」
高志は黙り込んでしまった。やっぱりダメか。
「冗談のつもりだったってごまかし続けて、凛がいなくなっちゃってもいいのかよ」
返事はない。
「僕が奪い取っちゃってもいいのかよ」
やっとこっちを見た。でも、自分と関係のないことを話しているみたいなぼんやりとした表情だった。
「おまえがそうしたいなら、そうすりゃいいじゃんか。あいつも朋樹とそうなることを望んでいるんだからさ」
「凛はそんな女の子じゃないだろ。それを僕は知っているよ。高志だって分かっているはずだ。だからおまえだって凛のことが好きなんだろ。凛のことをそんなふうに言うなよ。凛はそういうことを大事にするちゃんとした女の子だよ」
「何ガキみたいなこと言ってるんだよ」
クソガキじゃないか、僕たち。
「遠慮するなよ。あいつだって別に嫌がったりしないだろ。いつかはそうなるって思ってたんだろうし」
「じゃあ、何で高志の時は泣いてたんだよ」
「だから、俺のことが好きじゃなかったからだろ。俺はもういいんだよ」
高志が空き缶をゴミ箱に投げつける。
僕が放った缶はゴミ箱を外れて駐車場に転がった。
冬空に乾いた音が響く。
高志が拾ってくれた。
僕から離れるのにちょうどいいきっかけだったんだろう。
僕に背中を向けたまま缶をゴミ箱に投げつけた。
「話ってそれだけか。じゃあな」
「待てよ」
「なんだよ。めんどくせえな。言いたいことがあるなら早く済ませろよ」
「凛に謝れよ。ちゃんと会って話して謝れよ」
高志は僕に背を向けたまま黙っていた。
「凛はさみしくて僕に助けを求めたんだ。でも、僕がしたいようにしたって、凛の心にぽっかり空いたさみしさを埋めてやることなんてできないんだよ。おまえがやったことはおまえが責任をとれよ。高志が自分で埋めてやらないといつまでも凛はさみしいままじゃないかよ。逃げるな。なにもしないで逃げるなよ」
高志は僕からも逃げようとしていた。
僕に背を向けたまま歩き出そうとしていた。
右足を踏み出そうとしている高志の腕を僕はつかんだ。
「逃がさないよ。凛に謝れよ。ちゃんと向き合って自分の正直な気持ちを伝えろよ。キスしたいなら、そう言えよ。無理矢理じゃなく、ちゃんと気持ちを伝えて正面からぶつかれよ」
高志が笑い出した。
腕をふりほどいてこちらを向いていきなり僕を殴った。
凛にぶたれた頬がまた痛む。
今日は凛にも高志にも殴られる日だな。
僕も高志の腹を殴り返そうとしたけど、かわされてしまった。
「なんだよ、ずるいじゃないか。殴らせろよ」
「朋樹、おまえは何もできないやつだな。凛を奪い取ることも、俺を殴ることも」
「高志だってそうじゃないかよ。押し倒してびびっちゃって、やるチャンスを逃しちゃってさ」
「でも、俺はおまえを殴ったぞ。俺の勝ちだ」
どういう勝負だよ。
でも、それなら負けでいいよ。
「負けでいいからさ。凛を大事にしてやれよ。な、高志」