冬至りなば君遠からじ
 ポケットの中でスマホが震えた。

 凛からだった。

『パン買って来いよ』

 パシリかよ。

 いつだって優しいな、凛は。

 そうやって僕らは甘やかされ続けてきたんだ。

 ありがとう、凛。

 助け船に乗っかるよ。

『どこにいる?』

『若松神社』

『すぐ行く』

 僕は高志にスマホを見せた。

「行くだろ」

「サンキュー、朋樹」

 僕は高志と一緒にフードアイで二十個入りのクロワッサンボックスを買って若松神社に急いだ。

 境内のブランコに凛がいた。

 高志がクロワッサンボックスを差し出して声をかけた。

「買ってきたぞ」

 凛は驚いた表情で高志を見上げている。

 と、次の瞬間、凛はブランコから跳び上がって神社裏口に向かって駆けだした。
< 59 / 114 >

この作品をシェア

pagetop