冬至りなば君遠からじ
 僕ら三人は食パンマンションの前を通り抜けて駅前ロータリーから坂を上がって笹山公園の入り口まで走ってきた。

 僕はクロワッサンボックスを抱えていたから、いつもより走りにくくて、ばててしまった。

 石段下で僕が立ち止まると、凛が振り向いて指をさす。

「高志、持ってあげなよ」

「おう、よこしな、朋樹」

「ありがとう。これ、意外と重いよね」

「あたし先に行ってるから」

 凛は鞄でスカートを隠しながら石段を駆け上がっていく。

 元気だな、凛。

 僕は高志と二人で一段ずつ踏みしめながら上がっていった。

 展望台のコンクリート階段に凛が座っていた。

 いつも先輩が座っている場所だ。

 今日はいないようだった。

「あたしでがっかりした?」

「そんなことないよ」

 僕らは三人それぞれ階段に腰掛けた。

 上から一段ずつ、凛、高志、僕が並んだ。

 高志がクロワッサンボックスのふたを開ける。

 凛が後ろから一番先に手を伸ばしてパンを取る。

「おなかすいたね」

 ぽつりとつぶやいて、凛がパンを口に入れた。

 僕は二人を見上げながら高志からパンを受け取った。

 高志も黙ってパンをかじっている。

 凛が高志の背中をつついて振り向かせると、次のパンに手を出す。

 無言でパンを取り、かじる。

 僕は高志に目配せをし、凛はたまに僕をちらちら見ていた。

 黙ってクロワッサンをかじっていると口の中が乾く。

 凛が鞄からペットボトルの紅茶を出して飲んだ。

 僕も欲しい。

 凛がくれる。

 間接キスだぞ。

 うらやましいだろ、高志。

「あ、俺もくれ」

 え、僕の次でいいのかよ。

 ていうか、僕が嫌だな。

 高志は気にせず僕からペットボトルを奪い取るとぐびぐび全部飲み干した。

 たまりかねて僕は叫んだ。

「おい、高志。パン食いに来たんじゃないぞ」

 凛が口を押さえて笑う。

「朋樹、あたし、パン噴きそうになったじゃんか」
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