儚い絆
いつの間にか中庭に出ていて
彼は、ベンチに腰掛けていた。
私はやっと追いつき
中庭の風景をみていた。
すると
「俺の近くに寄るのも嫌か?」
と、いきなり彼の声が近くで聞こえて
びっくりして顔をあげると
彼は、眉間に皺を寄せて私を見下ろしていた。
《彼・相楽さんは、
身長が、180センチ以上あり
引き締まった体型
キリッとした顔
知らない人からみたら
一見怖そうに見られるが
私といるときに見せる笑顔は
当時、私だけの特権に思えていた。》
そんな事を思いながら
相楽さんに
「いいえっ、お話しすることもないから
ここにいただけです。
でも相楽さんは、なぜここに?」
「話もないか・・・
なぜとは?見合いだ。
早く嫁をもらって孫の顔を見せて
あげなさいと叔母が何度も言ってくるから。
見合い相手には、子供がいるときいていたが
旦那はなくなったのか?
でも、バツイチとは聞いてないが。」
「私の詮索は結構です。
相楽さんは、あちらの方と結婚されたと
思っていました。
あっ、もしかしてバツイチとか
いや、詮索はいたしません。
私は帰りますので、
このお話は、お断りになって下さい。
相楽さんが、言いにくいようでしたら
私の方からご連絡します。」
と、言って一礼して
母の元に戻ろうとした・・
「なぜ、そのように思った?」
「えっ、・・」
「だから、なぜ俺が向こうの人と」
「あっ、申し訳ありません。
余計な事をいって、
お気になさらないで下さい。」
「そんな事は言ってない。
なぜ、お前がそう思ったのか
知りたいだけだ。
当時の俺の恋人は
お前だったと俺は記憶しているが。」
「あ~あ、そんな時期もございました。
ですが、それは私の誤解だったと
わかりました。
相楽さんも建前でも
言われなくて良いですよ。
私は、当時の話を会社関係の方に
お話しすることはありませんから。」
と、言ってもう立ち去ろうと
思った。
当時の事を思い出したくなかった。