儚い絆
突然、彼に抱きしめられて
「また、居なくなったと思った。
もう次は、きっと会えないと思った。」
「えっ・・・」
走ってきたのであろう彼は
少し呼吸を乱していて
微かにふるえていた。
トラウマ?と彼が言ったのは、
本当の事?
私は、
「大丈夫ですよ。
今日は逃げたりしません。」
と、彼の背中を撫でた。
彼は、私の手を取り
近くの公園のベンチに
座らせた。
《それから彼は、
海外への転勤が決まっても
自分たちは、なにも変わらない
ずっと想いあっていけると
そう思っていた。》と。
「俺は、叶愛を愛していたし
叶愛も同じ気持ちでいてくれている
自信があったから。
だから、勝手に大丈夫だと思い
仕事にも頑張れていた。
だが、お前の寂しさや不安を
考えていなかった。
一年目は、まずは生活になれることと
社内を良くみてほしいと言われて
余裕もあったし
叶愛と電話で話したり
メールやラインでつながっていたから
不安もなかった。
二年目に入ると
環境にも仕事にも少しずつ慣れ
意見を言えるようになってくると
矢継ぎ早に仕事をやらされて
毎日、くたくたでマンションにも
帰れずに、会社に寝泊まりをする
日がずっと続いた。
やっと帰れても
洗濯物をするのがやっとで
食事をとるより、眠りたかった。
私が、何かいいかける度に
彼は、手で止め
聞いてほしいと言っているようだった。
“叶愛”が電話をしたときに
と、突然名前を呼ばれて
顔を上げてみると・・・