殿堂入りの君は、俺のもの
「だから、うるさいってばあんた」

「そうじゃなくて! なんで俺の事好きじゃないのにOKなの!?」

 俺がそう尋ねると、吉村は本を読みながら、微かに笑った。不敵かつ、上品なあの笑み。俺はやっぱりドキっとした。

「あんまり好きじゃないってことは、ちょっとは好きってことじゃん」

「ちょ、ちょっと……」

 まぁ、言葉の意味をよく考えるとそうだけど……。いや、でもちょっとって……ちょっとだけなんだ、はは。

 ちょっとショックだけど、嫌われてはいない……のかな。

「ちょっと好き、で付き合うの?」

「……だってさ」

 俺の問いに、美沙は指で自分の髪を絡めながら言った。なんだか色っぽいな、と思った。黒縁眼鏡をかけているのに、色っぽい。

「ちょっとは好きってやつも、いないし。大野以外」
< 12 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop