殿堂入りの君は、俺のもの
「うん」

「ま、じゃあ後でね。とりあえず日直の仕事終わらせる」

「分かったー」

 そう言うと、美沙は身を翻して、自分の教室に戻ろうとした。――しかし。

「忘れ物」

 一歩歩いたと思うと、美沙は再び踵を返し、俺の方を向いた。俺が“なんだろう?”と思っていると……。

 美沙はにっこりと俺に向かって微笑んだ。眼鏡はまだ手に持っているので、はっきりと美沙の顔が見える。いつもクールな彼女の、満面の笑み。俺はどぎまぎする。

 美沙は、一歩俺の前に歩み寄り、背伸びをした。俺より少し背の低い美沙が、俺とほぼ同じ高さになる。

 ――そして。

「――!!!???」

 俺は目を白黒させた。しかし、眼前にある美沙の瞳は、綺麗に閉じられていた。長いまつげと形のよい眉が見える。そして唇には、柔らかい感触。
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