殿堂入りの君は、俺のもの
 キスしてきたんだ、美沙が。

 美沙は唇を離すと、おかしそうに笑って、こう言った。

「今なんか、大輝の事すっごく好きに思えた。そう思った時に、思い出したんだよね、そういえばキスしたことないな、って。だからしちゃった」

「はい……?」

 え、は? ちょ、なに……。

 キスしたいからしちゃった、って。しちゃったって……。

 みんな見てますよ……?

 しかもさ、“すっごく好きに思えた”って。

「俺の事、ちょっとだけ好きなんじゃないんでしたっけ……?」

 激しく混乱しながらも、そう尋ねる俺。すると美沙は……。

「心は変わるものよ」

 そう言うと、眼鏡をかけて、呆然とする俺には構わず、すたすたと自分の教室の方に歩いてく美沙。
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