God bless you!~第10話「夏休みと、その失恋」

ヒロちゃん。680円。ロールケーキ。

7月20日。
明日から夏休み。
金曜日。終業式が終わって、午後1時。一番暑い盛り。
1時間も、同じ景色を眺めている。畑、畑、人、畑。
俺はひたすら電車に乗っていた。
2回乗り換えた。どれも見たことの無い色の電車ばかり。
……これから、俺は右川家に突撃する。決死の覚悟で。
こうなったら、親を丸め込んで受験させるしかないと思った。
右川亭で1回話しただけの、あの親父の顔が浮かぶ。あの親父なら、勝手に願書を出すぐらいはやってくれるんじゃないか。そこに、望みを託して。
父親は、土日は家にいるサラリーマンらしい。(進藤から聞いた。)
何とか話をしてみよう。
吉森から受け取ったファイルと、その他色々。いちおう修道院大学の願書も入れておいた。一般入試。あいつには絶対無理だろうけど。
それとは別に、ブ厚い大学案内を、俺は腕に抱えている。
こんな時期から始めて、俺に行ける国立ってあるのか。
これにも一部の望みを託してみる。どうせ長い道のりだからと、端から端までを舐めるように見て探しているのだ。
万が一俺もうまくいけば……そして右川もどこかに落ち着いて……お互いがどっちに転んでも、これで卒業したら綺麗さっぱり……白状する。
確かにちょっとは寂しい。
色々あった事、起きた事。あいつのドヤ顔を思い出す度にムカつくけど。
ここまでやれば結果がどうあれ、山下さんも納得してくれるんじゃないか。
急に暗くなったと思ったらトンネルだった。
スマホを見た。ノリからライン。
気が付けば、最初に乗り込んだ乗客は誰も居なくなった。程なくして駅に止まった訳だが、一駅停車に10分も掛っている。それでもあと5駅。
今日は午後の部活まで休んで来て……いいかげんにしろと、右川にも自分にも言っている。早く済めば、そのまま部活に出ようと一応そうゆう用意で来たが、無理かもしれない。ラインでノリに、行けそうもないと伝えた。
バレー部で揃えた上下は、名前こそ入らないが白いTシャツと紺のジャージという出で立ちである。これは涼しそうに見えて、ジャージはほとんど風を通さないから暑いだけ。そしてローカル線の午後の車内で、かけ離れた学区の服装は、何気に目立つ。
多分、中学生男子。
俺と目が合ってからというもの、敬意と脅威で、顔色が冴えない。
アイスを持ち込んだ女子が、好奇心を前面に出して、通り過ぎた。かなり離れて座ったものの、お互いに人見知りと挙動不審が止まらない。
右川は、終業式の今日、学校を休んでいた。黒川は居たから、2人でフケたという訳ではないらしい。夏休みが、そんなに待ちきれないのか。何の用事か知らないが、もしかしたら家にいるかもしれない。そん時はそん時だ。
午後1時。
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